「お前たちは・・・」


 自分たちの存在に気がつき、こちらに寄ってくるギル君。


 ボサボサの髪に、よれよれの囚人服。


 当然、剣も持っていない。


 必死の形相は、無我夢中でここまで逃げてきたことを言わずとも、語っていた。


 足がふらついている。


 もしかして、拷問でも受けたのか?


 何かを聞こうとする前に、ギル君は、自分たちの姿を発見すると、緊張の糸が切れたのか、その場で意識を失った。


「おい!」


 とりあえず、彼に近寄り、抱きかかえる。


 まだ、街を出てから数時間・・・遠くだが、先ほどのライスト国の首都だって見える。


 戻るには苦労しない距離だ。


 だけど、この格好、そしてギル君の形相。


 必ずしも、戻ることが得策だとは思えない。


「もしかして、この子がギル君?」


 ララが抱きかかえられた、男の子を見て聞いてくる。


 そういえば、コイツはギルの顔を見るのは初めてだったな。


「そうだよ。」


 とりあえず、どうするべきか?


 戻るべきか、連れて行くべきか・・・


 どちらにしろ、ギル君が起きてからだな。


「可愛い子ね?」


 寝ていればな。


「リン、とりあえず、ここで野営をする。魚でも果物でも良いから、この辺で食えそうなものを取ってきてくれ。」


 時間にしては少し早いが、仕方ないだろう。


「おぅ、任せろ!」


 言うが、否やどこかに消えるリン。