「お~いグスト!」


 そこまで考えたところで、リンに袖を引っ張られ、我に帰る。


「あ、すまん、ちょっと考え事をしていた。」


 悪い癖というわけではないが、どうしても新しい研究対象に目を奪われるのは知識人としての、悲しい性みたいなものだろう。


 とはいえ、グストはドーラに帰れる身ではない。


 バカスを殺し、逃げ出した重罪人。


 戻れば、どのような目にあうのかも分かっている。


 ・・・そうか、バカス殺人事件の情報が、どうしてライスト国にまで届かなかったのか、ようやく理解した。


 竜が出て、暴れまわっているのでは、身寄りのない老人が殺された、殺人事件どころではないだろう。


 ・・・汚竜か・・・どのような、モンスターなのかさっぱり、分からないが、そのあたりについてだけは感謝しよう。


「まったく。人が話しているときに、考え事は、失礼だぞ。」


 それをお前が言うか。


「悪かった。」


 とはいえ、ここは素直に謝っておこう。


 悪いのは自分なのだし・・・


「それにしても汚竜か・・・強いのか?」


 知るかよ。


「いや、弱い。」


 しかし、グストはリンにそう答えた。