「……遅い」



今は8時30分。

時間的には早いが、
約束の時刻は8時だ。




30分も、俺を待たせるか……。






「あっ、あの……」





「ったく!おそ……い」



怒りを露にして振り返ると、そこには可愛くオシャレをした、里香がいた。




「ご、ごめんなさいっ。準備に戸惑って……」



「行くぞ」



「えっ?」



「早くしろ。車はあっちに止めてある」




「あの……せんせ?」



「何だ」



「怒って……ないの?」



「怒ってるに決まってるだろう」



俺がそう言うと今にも泣き出しそうに俯き、黙り込む里香。




「……でも」



「え?」



「お前が可愛いから、もう良い」



チラッと里香の顔を見ると、
すでに頬は真っ赤になっていた。



「時間がない。早く来い」


「う、うん!」


ニコッと満面の笑みを見せると
小走りで俺の隣へやって来る。



どれほど、この日を待ち望んだか……。




里香は今、俺の手の中にいる。