「俺から逃げようなんて、百年はえーんだよ」




里香が出て行ったドアを見つめ、そう呟いた俺は、本日2本目の煙草を吸う。




久しぶりに見たあいつは、やっぱり可愛くて……一瞬、何を話すのか忘れてしまった。










「俺があいつに溺れて……どうすんだ」


ため息交じりに言うものの、
自然と口は、笑みをこぼす。





そんな自分に一人勝手に焦る。




「ハハッ……まいったな……」







溺れろと思ったのは俺なのに。
溺れているのは俺じゃないか。








「里香、頼む。早く俺を欲してくれ」







じゃないと俺は……自分の気持ちを止めることが出来なくなる。




無理矢理でも……
お前の全てを俺のものに…-






「……って、何思ってんだ、俺は」












里香……?
お前は知らないだろう。



俺の全てを与えると言いながら。
快楽に溺れろと思いながら。


本当の俺はお前を欲している。
全てを奪いたいと思っている。




こんな俺の葛藤を、
お前はきっと、気付かない…-








二本目の煙草を押し付け、
三本目へと素早く火をつける。




煙草が俺の、理性を止める。

俺自身が本能のままに動くことは、俺自身が許さない。









……もうすぐ6限目が始まる。


俺は煙草を素早く消すと、
化学準備室を後にした…-