群青の街

「…久々に裏の顔出しますか。」

ナミはタバコを灰皿に押し付けた。

レイラは賢い女だ。見ていればわかる。その女についた客を奪うこと自体、まず容易ではないし、その客から情報をひねり出すのはもっと難しい。いつもの『ナンバー1ホステス』の仮面を被っているだけでは、きっとボロが出る。

でも1ヶ月でなんとしてもやりきらねばならない。……あいつのために。そして、この街最高の地位につける、あいつ専属の、『情報屋』である自分の威信をかけて。














……雨が降っていた。

あたしは泥だらけの地べたにずっと座り込んでいた。





ふと、自分に打ち続けていた雨が、止まった。

不思議に思って、上を見上げた。


『汚いよ。そんなとこ座ってたら。』

『………………誰?』


そいつは、傘をさして立っていた。年頃は、自分と同じくらいに見えた。

『女の子なんだからさ、汚くしてちゃダメだろ。』

そういって男の子は、あたしと同じ目線までしゃがんだ。近くで見たら、驚くほど綺麗な顔をしていた。

『せっかく可愛いのに、台無しじゃん。』

男の子はその指で、雨のせいであたしの顔に張り付いた髪の毛をどけてくれた。その指が、とてもあたたかったのを覚えている。

『オレの家、近くなんだ。おいでよ。とにかく体あたためなきゃ。……名前は?』

『…………な、み。』


喋るときに無意識に震えた口元で、自分の体が冷え切っているのがわかった。

『なみか、いい名前だね。』


男の子はニコッと笑って、あたしの手を取って握り締めてくれた。


『さ、なみ、一緒に帰ろう。』


その手に引っ張られると、自然と立ち上がれた。なんだか、力が湧き上がってくるような気がした。


『オレは、ハルっていうんだ。よろしくな。』


そういってハルは、満面の笑みを見せた。