群青の街

《へえ、お前でも休憩貰えるんだ。》

「あー違うよ、勝手に貰ったの。嫌な客ついたからさ、嘘ついちゃった。」

《さすがナンバーワンだな。》

電話の向こうから聞こえる、低くて優しくて甘い声に、ナミは泣きそうになった。

このひとがいたから、自分はこの街で頑張ってこれたのだ。

《なぁナミ、早速で悪いんだが…、また少し情報が欲しい。》

「ん、いいよ。」

ーーーあんたの頼みなら、何だってきくよ。


その決意は、いつも心の中にある。


《その店に通ってる、マナベってゆう人物から、情報を貰ってほしい。》

「マナベ?初めて聞いたわ。」

《多分いつも、レイラをつけてる。》

「なるほど。」

レイラは店のナンバー2だ。自分とは違って、大人の女性特有の妖艶さを売りにしている。この店にいる期間は随分長いらしく、先輩として下っ端から慕われている。自分も少なからず尊敬している相手だ。

「レイラさんを敵に回すの嫌だなぁ…。」

《わりぃな。でも頼めるのお前しかいねえんだ。》

「わかってるよ。任せて、1ヶ月もくれれば、全部絞り取ってみせるから。」

《……やっぱオレのもんにしといて正解だったよ。》

ふいに言われた台詞に、胸が苦しいほどに高鳴った。けして恋人などに言う甘い台詞ではない、ただ仕事のことを言っているだけ。
わかっているのに、胸の高鳴りが止まない。

《じゃあ頼むな、ナミ。》

「……うん。」

《それと、今度『ワタリ』来いよ。》

「え?」

なんで?

「あたしとあんたは会うのNGなんじゃないの?」

嬉しいけれど、疑問を投げかけた。職業柄、容易く会ってはならない相手なのだ。

《お前が元気ないときは別。奢ってやっから、頑張れよ。じゃあ、また電話する。》

そう言って、電話は一方的に切れた。

元気がない素振りは見せなかったのに、こいつにはすぐバレてしまう。でもそれが、ナミにとっては嬉しかった。