かけがえのない唄

「おかえり」



ドアを開けると、思ってもみなかった声が返ってきた。




「ただいま……純、帰ってたんだ」



まだ夕方5時。
こんなにも早く純が家にいるなんて奇跡に近い。



「午前中で仕事終わったからさー久々のオフ」



セキュリティばっちり、学生にしては広すぎるこの部屋にあたしは純と住んでいた。最初は純だけだったのにいつのまにかあたしも定住していて同棲状態になっていた。



だけどこんなにも近くにいるはずなのに生純をみるのは実に1週間ぶり。



帰ってきただろう形跡はあっても、あたしが熟睡しているときに帰ってきて起きる前に出ていっているのだから、顔を合わせることはなかったのだ。




「ホント久々に動いてる妃菜を見たよ」



「帰ってこないからじゃん」



純がもうちょっとはやく帰って来てくれれば、ちゃんと顔、見れるのに。なんて心の中で毒づく。




「だって仕事あるんだもん」



ちょっと拗ねたような顔。
こんな顔されると、あたしも想われてるのかな、って思える。



「そーだ。妃菜、新曲とアルバム聞いてくれた?テーブルに置いてただろ、完成盤」




「新曲というか、昔からある曲だけどね。アルバムに関してはついこないだまでずーと聞かされてたから全く新鮮味はなかったけど」




「まーそうなんだけど」




そう言って純は苦笑した。