かけがえのない唄


「妃菜にとってあたしは、どーでもいい存在だったんだね」




ガタガタガタ、と何かが崩れるような音がした




「このCDだって、渡そうと思った。けど頑張って探している圭織をみて、渡せなかったの」





本当は渡したかった。
だけど渡せなくて



いつかタイミングをみて渡そうと毎日持っていたのだ。





「言ってくれなかったじゃん。信用してなかったからでしょ?」




圭織の目には一杯の涙が溜まっていて、最後の方は声が掠れていた。






「ごめん」




謝ることしか思い浮かばなくて、あたしはごめん、と繰り返していた。




「謝らないでよ、惨めになるじゃん」




「ごめん」




「だから、謝んないで!」



ぽた、ぽたっと圭織の目から涙がこぼれ落ちる。




事務所に何言われようが、圭織にだけは言っとくべきだったと今更ながら後悔する。




でもどうにもならない事で。





「雑誌に載ってた目隠しされた妃菜をみて、辛かった」




あたしも目に熱いものを感じる。





「あぁ、親友じゃなかったんだって」




「違う!」




あたしは無意識のうちに叫んでいた。




あたしも圭織の事、親友だって思ってるよ。