その人は本当によくしゃべる人だった。 沈黙になることもなく、ハイテンションで喋り続けた。 でも、私もいつの間にか会話を楽しんでいた。 「名前、何て言うん?」 すっかり打ち解けた頃に、そう聞かれた。 間違い電話を受けてから、1時間が経過していた。 「あ、奈保です」 「へぇー、奈保ちゃんか!可愛い名前やな!俺、シンイチだから!」 “シンイチ”。 どういう字を書くのかも分からない。 どんな顔をした人なのかも分からない。 だけれど、私の胸はドキドキしていた。