その名前を口にした途端、私は彼に抱き寄せられた。 行き交う人の流れが、止まったようだった。 本当に夢の世界だな、ここは。 お洒落な香水の匂い。 頬にあたるひげが心地よかった。 時間が過ぎる。 抱きしめられる感覚と共に、実感する。 ああ…会えたんだね。 追いかけてきてくれたんだね。 ―――今度奈保が大阪来たとき、俺が案内したるわ! あなたは、私との約束を忘れてはいなかったんだね。 しっかりと守ってくれた。 あなたが、私の好きなシンイチさんなのね。