後ろから、突然手首をがしっとつかまれた。 驚いて振り返るとそこには、見知らぬ男の人が息を切らしながら立っていた。 あごひげを生やし、少し長い黒髪を後ろでひとつに束ねている。 優しそう、というのがその人の第一印象だった。 「奈保やろ?」 彼が放った第一声に、私は耳を疑った。 彼は息を整え、かがめていた体を起こした。 背の高さと広い肩幅に、改めて驚く。 声で分かるよ。 あなたは―――