カンファレンスが終了すると、4時半から申し送りなので、その前に受け持ち患者さんのところへ行く。痰がらみは無いか確認し、担当ナースに伝えた。実はこれこそが看護なのだ。患者さんの状態を観察する。痰がごろごろしている。するとサクションが必要と判断し、施行する。サクションした後どのくらいの時間で痰が絡むか予測をたてる。情報収集、分析、計画、実施、評価をしているから、看護なのだ。そのことに気づくのは、ずっと先だった。

 申し送りも終わり、実習を終える時間となった。最後に患者さんのところへ挨拶に行く。意思疎通はできないが、言葉をかける。このとき感極まって泣いてしまう。生まれて初めての実習。初めて本物の患者さんと接し、学校で習ったこととすべて同じでは無いことを知った。緊張の糸がほぐれたのと、この患者さんに二度と会えないんだと思うと、悲しくなったのである。患者さんを客観的に見ることができない。患者さんにのめり込んでしまう。学生にありがちなことだ。それは決して悪いことじゃない。

 6人で集まり、

「二日間の実習、ありがとうございました。」

と挨拶し、病棟を離れた。帰るとき階段を下りながら、心は晴れ晴れとしていた。緊張から解放され、気分はさわやかだ。しかし帰ったらレポートが待っている。この日はいろいろ処置を見学したり、行ったりした。そのことについて文献と見比べたことを書かなくてはいけない。またしても眠れない夜となる。そして一週間以内に考察と終わりにを書いて、すべてのレポートを綴じて提出しなければならない。私たちは先輩が何故遊ばないで勉強ばっかりしているのか、やっと理解できた。二年生になると週に3回は実習だ。半日の日と、一日中の日がある。三年生にいたっては、7週間月曜から金曜まで一日中のオール実習もあり、そのうえ国家試験も待っている。私たちはもう遊んでばかりはいられないのだ。

 こうして初めての病院実習は終わった。ナースの厳しさもわかったし、学生同士で看護演習するのと違い、本物の患者さんと接することの厳しさを知った。しかし学期末まで実習はない。レポートを徹夜で提出した後は、再び遊びほうける私たちであった。