ある秋雨の降る平日の夕方、たすけとまやちゃんがスーパーに買い物に行くという。私も買いたい物があったので、一緒に行くことにした。月末でみんな金はない。実は私も500円くらいしか残っていなかった。だから食パンと牛乳だけ買うつもりだった。

 雨が降っているからと、たすけは学校ジャージの上にコート、私は黄色いすすけたトレーナーにスウェットのズボンの上にコート、まやちゃんにいたっては、部屋着兼用とはいえ、通販で買ったパジャマの上にコートを羽織っていた。みんな雨でコートを着るから寮内のそのままの格好で出かけたのである。さて、外に出てスーパーに向かったのだが、ちょうど焼鳥屋の近くを通った。夕方の5時過ぎで、おなかが空いている時間だ。私たちはものすごく誘惑された。

「焼き鳥・・・食べたいねえ。」

と私。するとたすけが、

「私、千円持っているから、ビール一杯と焼き鳥3本位ずつ食べようか。」

と言った。

「3人のお金を足せば、なんとかなるかもね。」

と私も賛成し、私たちは焼鳥屋に入ってしまったのである。席に座ると雨に濡れたコートは当然脱いだ。はっきり言って、年頃の娘からはかけ離れた格好をしている。まやちゃんに至っては、一応トレーナータイプとはいえ、パジャマだ。3人とも恥じらいながらビールそれぞれ一杯ずつと、焼き鳥9本を頼んだ。焼き鳥は実にうまかった。食べ盛りな上、酒も入っている。

「もう少し食べたいねえ。」

と3人で話す。それでみんなで財布を見た。私は青ざめた。300円ちょっとしかない。あわててたすけに、

「ごめん、300円しかなかった。」

と言ったらたすけは、

「私、1500円ある。」

と言う。まやちゃんは・・・。財布を見て一言、

「ひえ~、15円しかない。」

結局中途半端に食べ終わり、ぎりぎり精算を済ませ、寮に帰った。しかしまやちゃん、15円で何を買おうとしていたのか。このように行動、言動すべてにおいて、面白いまやちゃんとの楽しい生活を、半年過ごすことになった。