もちろん本物だ。説明書きには「死刑囚」と書いてあった。ちょうど首から切断され、ガラスの入れ物におさまっていた。普通こんなものを見たら卒倒しそうなものだが、私は、

「ちょっとちょっと、すごいの見つけちゃった。」

と付近にいた4~5人に声をかけ、みんなでまじまじと見た。ホルマリンに漬かっている人は、男性だ。目は閉じているが、口は半開きだった。それは確かに人なのに、人という感じがしない。ガラスの瓶に入っている彼は、もはや「物体」である。

「初めて生首見たよ。」

と誰かが言ったが、当たり前である。見たことがあったらその方が問題だ。そのほか著名人の脳みそのホルマリン漬けとかあり、東大の研究室見学は、予想以上に面白かった。それから横浜に向かい、みんなで中華街に行った。横浜の中華街なのだから、さぞおいしかろうと思っていたが、入った店が悪かったのかわからないが、たいしたことはなかった。北海道の店の方が、もっとおいしい。そしてバスに乗り、ホテルへと向かう。一泊目はクラス全員同じホテルだ。先輩から、

「夜はフランス料理とかのディナーだから、正装を準備していった方がいいよ。」

と聞いていたので、みんな事前にスーツなどを新調していた。私も親に無理を言って、ブランドもののスーツを一着買った。ところがである。担任の先生からバスの中で、

「今日の夕食は中華です。」

と告げられた。みんな

「えーっ!」

と大ブーイングである。