私たちは、大変焦った。とりあえずみんなで飲み屋で作戦会議を開く。朝6時の玄関の鍵が開くまで待つか?しかし朝までやってる飲み屋など無い。せいぜい3時までがぎりぎり限度だ。その後は24時間営業のファミレスで時間をつぶすか?だけど学校も実習もある。朝まで飲んで実習に行くのは体力的にとてもきつい。次の日休みなら、その後眠れるから徹夜で遊べるが、実習があるんじゃ、少しでも寝ないと体がもたない。レポートで徹夜するのとは訳が違う。これは何とかして帰ろうということになった。するとさっちが、

「うちの部屋、いつも窓開けて寝てるよ。うちの部屋の窓から入ろうよ。」

と提案した。7月だったので、多少暑くて、少しだけ窓を開けて寝るのだそうだ。だがちょっと待って。さっちの部屋って3階じゃん!どうやって登るのか?だが時間は午前2時をまわった。私たちは、さっちの提案を決行することにした。

 さっちの部屋は正面玄関の裏側で、表道路からは死角になっている。向かって右手に崖、後ろに木造平屋建ての民家がある。崖を登り、民家の屋根に上がり、ジャンプして寮の屋根に飛び移り、つたい歩きでさっちの部屋まで行くことにした。私たちは意を決して崖を登った。飲みに行くのだから、みんなおしゃれしているのでスカートだ。それに靴もヒールの高いのを履いているから、崖をよじ登るのに、想像以上に手間取った。ちょうど民家の屋根付近まで登ったら、今度は民家の屋根に移る。足下が不安定で、屋根も斜めになっているから、大変危ない。それでも4人とも民家の屋根に上がることが出来た。たぶん、民家の住人には、音が聞こえるはずだが、誰も出てこなかった。夜中なので寝ていて気づかなかったのかもしれない。さて、今度は寮の屋根に飛び移らねばならない。ジャンプしないととどかない幅で、一番の難関だ。皆靴を脱いで手に持ち、ジャンプして飛び移った。私もいざ飛び移ろうとしたが、意外に幅が広い。ここでもし落下したら、けがをするうえ、門限破りがばれてしまう。怖かったが追い詰められた状況なので、えいっ!とジャンプした。幸い落下することなく寮の屋根に飛び移れた。これでなんとか4人とも屋根の上にあがることに成功した。そこからは傾斜の屋根をつたい歩きして、さっちの部屋まで行った。さながらルパン三世のようである。で、さっちの部屋の窓は・・・。開いていた。助かった。