君への距離~あなたに一番近い場所~

「シオ?」


シオが翼のマンションの下に原付を止めていると、ちょうど翼が自転車で帰ってきた。



「どうした?」



「翼に言いたいことある!」



「あ?何?」
翼はにっこりと微笑む。


「あのなぁ~人が真面目に話しとるんや!ヘラヘラすんな!」


「ごめん、ごめん」

翼はまだ少しにやついていた。



「なんや、この前は死にそうな顔しとったのに…」


「そうだっけ?」


「仲直りしたん?」


「まだ…だけど、また頑張ろうかと思って!初心に帰ってまた片想い!!」

翼は明るく言った。



「そうか…でもな!」
シオは翼が思いもよらない言葉をいいはなった。

「片想いからなら俺も一緒や!」


「…え?」


「スタートラインは一緒なんやって!」


「シオ…?」


「俺かて杏好きや!」

「は?ちょっと…」


「お前にとやかく言われる筋合いねえぞ!もう翼は杏の彼氏でも、まして彼女が杏なわけでもねえんだから!」



翼は呆然としてシオを見つめる。



「遠慮せえへんぞ!絶対負けへん…」



シオはそう言うとさっさと帰っていった。