かん吉はある日いきなり店の扉に長期休暇の張り紙を貼った。



「奥さん、迎えにいく。」


かん吉はそう言って笑った。




「そうっすか…」


午前4時、駅まで見送りにきた翼が言った。





「パパー!!!」


杏が駆けてきた。



「おい、おい、あんま走るな!」

かん吉が心配そうに言った。



「…ハア、寝坊しちゃった!」





「待ったー」

マサキとシオも走ってきた。


「杏速すぎや!」

マサキが息を切らして言った。






「みんな来てくれたのか?」

かん吉はうれしそうにみんなの顔を眺めている。



「あ!!」


杏が何かを思い出す。


「リョースケ!!」




シオ、

「杏が部屋まで起こしに行ったやろ?」



「行った…」


―リョースケ!パパ行っちゃう!!

寝ぼけたリョースケがフラフラ起きあがる。
―うわあ!!リョースケ、ゴキブリいる!


玄関にゴキブリが…

杏が下駄箱の上のBanを掴みゴキブリにかける。


シュー


―なんだ?やかんか?お湯沸いたんか??

リョースケが勘違いして台所にやってきた。


逆上(?)したゴキブリは杏の足元へくる。

―ぎゃー!!

杏は慌ててBanを投げ捨て、部屋から走って逃げた。



今思えば放り投げたBanは何かにぶつかったような鈍い音がした…

鈍い音が…





(まさか…)





翼、
「杏ちゃん?顔色悪いよ?」

マサキ、
「頭悪いよ?」

シオ、
「リョースケは?」


「…し、知らない!」




杏がとぼける。