『お~い?泉ぃ~??』

後ろのドアが開いた。

この声…マスターじゃない?


『あれ?すみれさん?

そんなところでどうしたの??』


「お願いです…」


涙が止まらない。


「救急車…呼んで下さい…」

マスターの足跡が近づいてくる。



『い、泉っ?!』

マスターはぐったりする泉さんを見て、絶句した。


「早くっ!早く救急車を呼んでくださいっ!!」

思わず、声を荒げてしまう。


もう泉さんの意識はほとんどなかった。


『すみれ…さん』

うっすらと泉さんの目が開いた。


「もう…喋らないで…お願いです…」

私の涙と泉さんの血が混じる。



『シオンって…知って…ますか?』

首を横に振る。

勢いで涙が飛び散る。



『シオンの…花言葉。花言葉…は…』

そこで泉さんの言葉が途切れた。


「泉さん?」

声をかける。

でも、応答がない。


「ねぇ…っ!泉さん!!」

体を揺らす。

それでも、応答がない。


「………イヤァーー!!!!」


死なないで。

お願い。生きて。


たぶん…きっと…私は…泉さんが…


遠くのほうから救急車の音が近づいてきた――……