『すみません…話、聞いてしまいました』

泉さんはふっと力なく笑う。

なんだか生臭くて泉さんのお腹のほうを見る。



「……………っ!!」

やっぱり…私の代わりに刺されちゃったんだ。



『いいですか?…僕を刺した犯人は…通り魔、ってことに…してください。

決して、愛子さんの名前を…出さないで…ください…』

息が荒くなり、大量の汗をかく泉さん。



「どうしてなんですか…っ」

涙がボロボロと溢れる。



『僕が…できることは…あなたを守る…ことだけだった。

これが…僕の使命です。


大丈夫。

僕は死にませんよ…』


そう言って笑う泉さんだけど全然笑えていなかった。



『僕は…奥寺さんのため…でも…愛子さん…のためでもなく…あの2人の息子…さんの…ために…2人を…逃がしたんだ…』

うっと唸る泉さん。



「もう喋らないでください…っ」

泉さんが死んじゃいそうで。

怖かった。それが、とても怖かったんだ。



『大丈夫…ですよ』

そう言った泉さんは続けた。



『僕は息子さんに…同じ想い…を…して…ほしくなかった…』

息切れが激しい。


「もう…話さないで…泉さん…っ!!」

ギュッと泉さんを抱きしめた。