『すみれちゃん……』
奥寺さんが申し訳なさそうに私の名前を呼ぶ。
やっぱり、あの人は奥寺さんの奥さんなんだ。
私よりも背が低く、痩せていて。
そしてキレイというより可愛い人。
「まだ若いじゃない…
これからでしょ?あなたの人生。
なのにどうして和夫を私から奪うの…??」
ワナワナと唇を震わしている。
そしてカバンの中をあさり、何かを取り出した。
街頭に反射してソレが光る。
『お、おい!愛子…落ち着け!!』
さすがに奥寺さんも驚いたようで。
でも不思議と私は落ち着いていた。
こうなることが分かっていたかのように冷静だった。


