『こんばんは~』
時間はあっという間に経ち、私はバーにいた。
『いつもの席、空けておきましたよ』
カウンターの端に座る私に泉さんは言う。
「いや、いいんです」
首を横に振る。
ここに来る前から決めていた。
「ここにいると泉さんに頼ってしまいそうなので別の場所で話をしようと思っています」
泉さんは微笑む。
『そうでしたか。
僕はここにいます。
だから、もし何かあったときは必ず来てください』
その言葉に私は頷いた。
奥寺さんと話し終わったら、ここに来るのは決めていた。
たくさん、相談に乗ってもらって
たくさん、励まされて
別れる決心をさせてくれた泉さん。
お礼が…言いたかったんだ。
ただ私はまだ、何も分かっていなかった。
不倫が最後に何を招くのか。
そして誰が1番大切なのかを…


