「すみれ」


私と綾は午後からの講義をサボっていた。

2人でまったりランチ中。


食後のコーヒーを飲んでいると綾が真面目な顔をして口を開く。



「ずっと、心配だったんだよね、実は。

あんたが奥寺から抜け出せないんじゃないか、って。


いつか別れられるって信じてる自分と一生このままなんじゃないか、って思う自分と両方いた。」


綾はコーヒーをスプーンでかき混ぜながら独り言のように呟く。




「あたしが別れなよ、って言う度に笑って流すすみれが心配だった。

相手は奥さんも子供もいて。


それ分かってる上で別れられなくて。


何がいいんだろう、って。

どうして別れられないんだろう、って。


いつも…考えてた。」


私を見つめる綾の瞳に涙が溜まっていた。




「だから別れるって決めたの知ったとき、すごく嬉しかったんだ。


すみれが。すみれが元に戻るって。


奥寺と関係を持つようになってからすみれは確かに幸せそうだった。

だけど、その裏に見え隠れする寂しさが…あたしには分かってたから。


だから…別れてほしい、って思ってた。」


綾…ごめんね。

いっぱい、心配させてたんだね。


今までごめんね。

それと、見守ってくれて…ありがとう。