『それから分かったことはただ1つだけだった。
お袋は親父のことを愛していた、ただそれだけ。
裏切られても親父を憎まなかったんだ、お袋は。
だから…女の方を刺した。
警察でそう話していたらしい。
バカだよな…お袋。
裏切られたのに…
なんで…最後まで親父を愛せるんだろ。
俺にはまったく理解できなかった。
今はまだ、刑務所にいる。
いつ出てくるかなんて知らない。
ただ、俺は不倫した親父も女を刺したお袋も憎んでる。恨んでる。
きっと一生許せないと思う。』
泉さんは目頭に手を当てた。
目は真っ赤に充血していて。
「泉さん。
泣くの…我慢しないでください。」


