携帯から二人の名前が消えた。

恋人、久保尚哉(クボナオヤ)。
親友、崎本弘人(サキモトヒロト)。

大切な二人を失って、残ったのは俺、浪越望(ナオノゾム)。

尚哉とはつい1時間前に喧嘩別れ。
弘人は一週間前に、自動車事故に巻き込まれて亡くなった。

「なんで…、なんでいなくなっちゃったんだよ……」

部屋に帰ってきてうなだれる。


いなくなって分かる大切さ。
それが今では痛いほど分かる。

「弘人…帰ってきてよぉ……。弘人がいないから、尚哉ともダメになったじゃんかぁ……」

死人に口なし。
そんなこと分かってる。

ただの八つ当たりだってことも分かってはいる。

でも……受け止められないんだ。