今のナツには、ウ"ァルガー[俗悪]な所が微塵も見られない。


(世界が白ければいいのに)

その中で、ただ自分の直線上に大事な人が誰1人欠けることなく居てくれたらよかった。




7月30日―

ミカンの19歳のバースデー。

2人は一緒に暮らし始めた。

「いつも一緒がいいよね」

ミカンの理想を現実へと昇華[あっという間]した。

寝ても覚めても、そこに愛しい人が居るという毎日。

幸福感、安心感、常楽感。

日々が真新しく、ナツは倖せだと言い切れた。


そして今日、8月24日―


19歳を迎えるナツは、半年前から始めたバーテンダーのバイトを休み、赤い橋へ歩いて向かう。


「たまには、外で待ち合わせて歩いてデートしよ」

ミカンの提案で花火大会に行く事になった。



「花火が消えていく儚さが好き」

ミカンは言った。

「なんか虚しくない?」

「違うよ。花火は消えていくから綺麗なの。人もそぅ。いつかみんな死んじゃうから、綺麗な花を咲かせたいって思うんだよ?それって虚しいこと?違うでしょ?儚いからこそ輝きは増すんだよ」


ミカンの純真さが心に染みた。



(ミカンはバイトが終わり、もう橋の上で俺を待ってるだろう)