全てをミカンに話し、少し躊躇うナツをミカンが押しきる形で。

ナツの中でくすぶるウェーバー[ためらい]

サクラ―

本当は今でも哀しみを受け止めるだけで精一杯なのに。

サクラを忘れてしまいそうな自分に嫌悪を感じた。

そんなナツを見てミカンは

「悲しい時は悲しいままでいいよ。無理に笑うと心が割れちゃうから。自然にミカンと笑えるようになるまでゆーっくり前に進も。その人の事も忘れなくていいから」

「アリガト」

ミカンの膝にすがって泣き出したナツは、この時初めて[アリガトウ]の意味を知った。




この頃からナツの周りでは微妙な変化が表れだした。

昨日バニラに顔を出すと
サリーのリーゼントはオールバックに
ハチベーはパンチパーマからアイパーに

「コヤジは何も変わってないの?」と訊くと

携帯の着信音を『東京砂漠』から、『東京』に変えたと答えた。

「東京繋がりかよっ!だったら『TOKYO CITY NIGHT』だろっ」

そう言いながら頭の中で

(時には今迄大切にしてきた事でも、手放して前に進まなくてはいけないのかもしれない)

と考えた。