「ねぇ、チューしてもいい?」


ミカンの何気ない言葉でナツは今、ブレーキのイカれた車に飛び乗った。

(目の前の急な下り坂は、ニュートラルのまま惰性に身を任せるのもいい)

いつか、ブランチロード[分かれ道]があると分かっていながらも。

この気持ちは見過ごす事は出来なかった。


安定したステレオタイプ[マンネリ]を抜け出してしまう怖さ。

それよりも、この先に広がる2人だけの領域を覗いてみたいと願ってしまった。

2人の唇がゆっくりと重なり、冷たいカクテルを飲んだばかりのミカンの唇に微熱を奪われていく。

砂場に伸びる2つの星影が溶けて1つに混ざり合う。

目を開き、見つめたミカンの瞳に映っているのは間違いなく自分なんだと陶酔してゆく。

天から今にも星が落っこちてきそうな澄んだ夜。

(この娘が好きだ)


ナツの疑問は確信へと変わった。





ナツとミカンは出会ってすぐ付き合い始めた。