もしかして、この音がミカンに
(聞こえたのでは?)と
俯いたままでいると

「ねぇ、服とかCDとか買う時、一目見て『これカワイイ』男の人なら『これカッコイイぜぇ』ってあるでしょ!?」

丸ん丸い目をして訊いてきた。

「うん、ある」

「人間にもそおいうのあると思う?一目惚れってやつ」

「ミカちゃんはどうなの?」

ナツは話の流れに照れて、切り返した。

「ミカンでいいよ」

「じゃあ、ミカンは?」

「あると思う。てゆーか、今日初めて知った」
ミカンはナツの鼻先を真っ直ぐ指差す。

「.....マジ!?」

バースト[破裂]しそうな鼓動を鼓膜のすぐ内側で感じながら聞き返した。

「マジ」

少し間を開けてナツは口を開いた。

「俺もあると思う。例えば俺のサインに気付いてくれた娘とか」

するとミカンは後ろから抱きつき

「やっぱ運命なんだよっ」

と耳元で囁いた。

ミカンの髪の毛からフローラルな香りが鼻孔を通り抜ける。