カラオケを出て、皆で酒を買い漁り近くの公園へと場所を移すことにした。

公園に着くと皆、好きな酒を取りブランコやシーソーに分散して行く。

ナツはビールを手にベンチに座った。

「うわっ、冷たっ」

ミカンがナツの頬に缶を当てた。

「へへっ、ごめんね」

ミカンはベロを出して笑う。

その顔を見たナツは、懐かしくもトキメキを感じた。

ミカンはサクラとは全く異なるタイプの娘だった。

甘え上手で、頼りなくて、何か守ってあげたくなるような可愛らしい。

ナツは眠らせておいた感情を覚醒されそうになるのを抑圧する。

夜空には銀の星が躍り、その瞬きが2人の男女の輪郭を鈍く浮きあがらせる。

「ナツ君てさぁ、時々フッと淋しそうな目をするよね?」

ナツは弱さを見られた気がして恥ずかしくなった。

「そんなことねぇよ」

「ミカンね、そういうの分かるんだ。ナツ君はぁ、いっぱい辛いことがあったんだなぁって。人は哀しいと目からサイン出すの。
『誰か気付いてぇ』って。ナツ君、今その目してたよ」

ミカンの一言で臆病だった心の鍵が微かに、そして確かに開く音が身体中に響き渡った。