これで日記は終わっていた。


(サクラは全部忘れられただろうか?俺の事も忘れたかったのだろうか?)


そう思うとナツは場所も気にせず声をあげて泣いた。





そこへ刑事が入ってきて気休めにもならない戯言をナツに向けた。

そして、
「もぅ少し落ち着いてからにしよう」と出て行こうとする刑事の腕をナツは掴む。


「オィッ!絶対見つけろよ!こいつら許さねぇ、ブッ殺してやるっ」と、喰ってかかった。

刑事は、さも馴れたように

「少し落ち着け」
と言って部屋を出て行った。


残されたナツは、まるでドクマ[宗教上の教え、信条]に踊らされた道化師の気分だった。


この1ヶ月サクラは嘘だけで造られていた。

ナツはサクラが死に至るまでのプロセス[過程]を幾つも見落としていた。


サクラの心の痛みが、今更になって必要以上に悲哀のドアを乱打する。





サクラがかつて好きだった赤い橋の上に立ってみる。