「ナツの声が聞きたくなってね。アハハハッ」


喋りがスローだ。

「お前、ラリってんのか!?」


「ラリってないよぉ~。ちょっとね、ちょっとフワフワしてるだけぇ」

「ふざけんなよっ!今どこだっっ?」

「わかんなぁ~い。風が気持ちいいよぉ。アハハッ」

「取り敢えずそこに居ろよ」


「取り敢えずぅ、取り敢えずぅ アハハハハ」

「話になんねぇ。動くなよっ!!」

そう言って電話を切ろうとした時

「来ないでっっ!」

サクラから電話を切られてしまった。

「クソったれ!!」


ナツはすぐ電話を掛け直したが

「お掛けになった電話は電波のー」

無機質で無感情な女の声に平静を浸食されるだけだった。

ナツはヘルメットも持たずにティモシーに跨がり、ある廃ビルを一直線に目指した。