ナツは南の部屋に居た。



一週間前と何も変わらない。

今にも南が帰って来そうなくらいに。


ナツは南の部屋から1日中窓の外を眺めている。


「南ぃ。お前の好きだった桜、最高に綺麗だぞ。お前も見てるか?」

すると、一瞬の春風が花ビラを宙にさらった。


「やっぱお前もそう思った?」


一週間振りのナツの笑顔。

「お前の連れて来たサクラ大事に俺が咲かせるから」


独り言ともとれる小さな小さな声で呟く。

そして、ナツは南の部屋のシドを指差す。

「見納めだ。バーン!」

そしてドアを開けた。





哀しみから抜け出すようにティモシーに跨り、自分の桜を迎えに春風を追い越して行った。