ナツは祈った。


(南、どっか行く時はround trip ticketsを買うもんだぜ。せめて水先案内がブルーバードであるように)


そして何より


(俺の手の中にある哀しみ全部、指の隙間から零れ落ちればいいのに)と


神という人が居るならばその人に切に願った。


一週間後―



ナツの家には南の愛車があった。


南が生前、

「もしいつか俺が死んだらさぁ、このドラッグマシーン・ティモシー号はナツにやるよ」

「じゃあ、早く死んでくれ」

「まっ、死にかけてもシャブ打ちゃ一発で生き返るからやる時ねぇんだけどな」

南がハハハッと笑いながら言っていたのを思い出し、南の両親に頼み譲り受けてきたのだ。



両親は、南を回想する事もなく、泣くでもなく、アムステルダムのコーヒーショップで貰ったブルドッグのキーホルダーが付いた鍵を事務的に渡してくれた。


ナツはその機械じみた一部始終に憤りを感じたが、拳を握り締め憎しみの礼を告げ南の家を後にした。