市街地から少し外れた、岡本川沿いの寂れた場所に南の寝倉が在った。


築40年位の建物ー

外壁にはクラックとカビでケバケバしい装飾が施されており、人が住むには最低水準のレベルに近い。

南の部屋は2階の一番奥。

当然、表札なんて立派な代物はどの部屋の玄関を見ても見当たらなかった。


両親から面倒見きれないとスプーンを投げられた南。

用意されたこの古いアパートに押し込まれてもぅ2年になる。

家賃だけは親が負担してくれているが、生きてく為の金は、薬のスマグリング(密輸)とセラー(売人)として賄っていた。



南はこの世界ではかなり有名だった。


リーガル(合法)もイリーガル(非合法)もその辺のセラーより豊富な種類を扱っている為、結構な数のドーフィン(中毒者)を抱えていた。


ナツはドアを叩いて「南っ!」と呼んだ。



しかし、何も反応が無い―


ナツはドアを開けてもう1度「南ぃっ!」と呼ぶ。


南の部屋のドアは年中無施錠だった。