すぐに消す訳にはいかなかった。

涙が柄じゃない事ぐらい自分が一番よく分かっているから。

ナツは1本1本ユックリ消して時間を稼いだ。

全て消し終えると照明が灯され、拍手がナツをもう一度幸福へと誘った。


「アレレ~!?ナツ君もしかしてぇ.....泣いちゃったんじゃね??」

南がニヤニヤしながら見ている。

「バ~カ!例えお前が死んでも泣かねぇよ。でも、まぁ取り敢えずサンキューな」

ハチベーがナツに中ジョッキを手渡し皆で乾杯する。

「チアーッ!!!!!」

向こうでギターを弾いていたサリーをナツが見ると軽くジョッキを上げて笑った。

ナツはサリーを見て(やけにカッコよかったな―)と思った。

(こんな風に音楽でも人に何かを伝えられるのか)

そう思うと同時に自分が音楽をやりたい衝動にかられた。



「なぁサリー。バンド組まないか?」



この一言で少年達の新しい世界が広がった。

17歳の誕生日の日にナツとサリー、南の3人で新しいバンドが産声を上げた。


バンド名―「Shelly」シェリー

サリーの好きなカクテルのスペルを変えて付けられた。