検事調べでも同様に
「お前このままだと刑務所行くよ」
と脅されても怯まなかった。

机を蹴り、捲し立てる検事。

(こいつらが冤罪を作る原因か)

そう思うとムカついたが、聞き流すのが得策だと鼻唄を唄った。





20日拘留が終わり、起訴されたナツは拘置所に移檻され裁判を待つ被告となった。

一部否認の為、弁護士以外の人間とは接見[面会]を許されず、独居房での生活が強いられる。

1人きりの1日は余りにも長過ぎた。

唯一の支えは思い出。

しかし、ナツには辛い思い出が多すぎて、追憶する日々が苦痛だった。


12月なると、部屋のなかで明晰に現れる白い吐息。

消灯時間21時。

僅かな豆電球だけでは心細く、頼りない。

膝を抱え、肩をすぼめ格子で区切られた窓の外を見詰る。

四角いパズルの空でも月は美しく凛々しい。

汚れた自分がちっぽけで堪なかった。

(窓の外の人は誰も俺に気付かない)

(俺は今、この世に居ない人間なのか?)

存在理由をどうか与えて欲しかった。

「ミカン.......」








一部否認の為、裁判は長引いた。

全ての生命の息吹まで感じられそうな春が来て

全てを焼き尽くすかのように燃え盛る夏が過ぎ