数日後―

ナツは傷害・殺人未遂の容疑で逮捕された。

刑事の話によると、刺した相手は重体らしい。

(殺しきれなかったか)
ナツは歯痒さに奥歯を噛んだ。


何も話す気になれないナツは取り調べ中、黙秘し続けた。

48拘留[48時間]が過ぎ、10日拘留延長された。



3日目の朝、弁護士が面会に訪れた。

ナツの親に依頼された私選弁護人。

まだ若い。
場数が少ない為か、汚い所を見てない為か、高い理想と志しが窺える。

(自分の犯した真実に、何の弁護が必要なんだ?)

本当に罪を犯した罪人でさえ弁護される人間の権利。ナツは可笑しくて仕方なかった。


「さて、事件について本当の事を話して下さい」

ナツは一通りの事の流れを話した。

弁護士は話を聞いた後、殺意を否認して供述するように言った。

殺人未遂を傷害に落とし、執行猶予を取る為だ。

ナツ自身、相手の為に刑務所に行くのは(馬鹿らしい)と思い弁護士の意向に添う事にした。


取り調べでは刑事がパソコンに向かい尋問してくる。

時には蔑み
時には同情し
時には恫喝しながら誘導する。

ナツは刑事の誘導に掛からぬように、供述1つ1つの語句を考えながら、そして必要以上の事は喋らなかった。