11月―

ﾅﾂは珍しく家に居た。

しつこく携帯が鳴り響く。

「お前しつけぇよっ!何?」

「ﾅﾂ君!?ｺﾔｼﾞ君が、ｺﾔｼﾞ君がぁ」

ﾊﾁﾍﾞｰが錯乱しながら何かを一気に捲し立てた。

「おぃっ!ｺﾔｼﾞがどうした?ﾕｯｸﾘ話せっ!!」

ﾅﾂはただならぬ雰囲気を読み取り、ﾊﾁﾍﾞｰを落ち着かせようとする。


「中央公園で10人位の奴等に囲まれててっ」


聞き終わらぬうちに携帯を切り、ﾅﾂはﾃｨﾓｼｰに飛び乗った。



15分後―


早くも落下し始めた太陽は、ﾗﾝﾀﾞﾑに群立する灰色の石塊に呑み込まれて行く。


公園をぐるりと取り囲むｵﾚﾝｼﾞとﾊﾟｰﾌﾟﾙの胸を締め付けるようなｸﾞﾗﾃﾞｰｼｮﾝの背景。


その真ん中に微動だもしない2つの人影た。


「ｺﾔｼﾞっ!!」


そこには強く、二枚目のｺﾔｼﾞの姿は何処にも無かった。


在るのは、血だらけで死にかけの野良犬と

それに同情は出来ても触れる事は出来ないﾑｶﾂｸ程に弱いｸｿｶﾞｷだけだった。