ラウンジの隅のボックス席に座ると、ママらしき女性がすぐに挨拶にやって来た。

どうやらピカチュウがよく来る店らしい。

「ママ、今日からワシに着いて歩く事になった奴等じゃけぇ、可愛いがってやってくれや」

大物風を吹かす。

九州出身のピカチュウは某ヤクザ映画の影響を受けて広島弁を喋っていると誰かに聞いた事があった。

改めて聞くとイントネーションがおかしかった。

(ほんとはどうなんだ?)


そんなナツの疑問に答えを裏付ける事をピカチュウが言った。

「お前ら、仁〇なき戦い見たことあるか?一回見てみぃや。ワシャあれでこの道へ来たんじゃけぇ。ありゃ、名作じゃ。次までに見とけよ、感想聞くでぇ」

(バカかコイツは)

ナツは面白そうに笑うピカチュウの歯に埋め込まれた本物のダイヤが、どうしてもイミテーションにしか見えなかった。



店を出る頃にはピカチュウはかなり上機嫌になっていた。

「今日はご馳走さまでしたぁ」

「おぅ。それより、ワシもすぐに舎弟になれたぁ言わんけぇ暫くワシに着いて考えてみぃ。お前らならええ若いのになるで」