数日後

久し振りに快晴となり、ナツは街を宛てなく徘徊していた。

昼を回ったばかりの平日は働く人が目立つ。

6月の穏やかな風と、何よりもこの明るさが心を少しだけ軽くした。


ブールバール[並木道]を歩きながら一時の安息に身を任せていると、少し先の方で歓喜の声が上がる場所があった。

(教会かぁ)

小さな教会にフッと目をやると、そこには大勢の人々から祝福を受けながら赤い絨毯の上を歩くブライダルカップルがいた。

ジューンブライド―(いずれミカンと)

一度は本気で考えた光景がそこにあった。

今のナツには考えられない程の笑顔が零れている。



花嫁が花束を持って後ろ向く。

女達は待っていたとばかりに集まり花嫁の後ろで待ち構える。

次の瞬間、フラッシュと歓声の中ブーケは勢いよく宙を舞った。

「あっ、強く投げすぎちゃったぁ」

花嫁が言った。

事実、女達の予測した落下地点を悠に飛び越え
「あぁっ」
という声と共に全ての人の視線がブーケの行く先に集まった。

幸福の花束の放物線。

その延長線上に立っていたのはナツ。