別れの日は涙を誘うような、雨の夜だった。

1人の男が大事な人を失った

1人の男が幸福に裏切られた

1人の男が神にさえ手を上げた

1人の男が優しさを放棄した

街行く人は誰も知らない。

ここに佇む徒花[咲いても実を結ばない花。むだ花]が、一条の光を求めている事を。

他人事の先には、やはり他人事。

このままでは、水が多すぎて花も咲かせられず、やがて根は腐食し枯れてゆく。


If―誰かがそっと傘を差し伸べてくれたなら。

美麗な花くらい咲かせられるのに。

If―誰かがそっと話掛けてくれるなら。

少しは傷も癒えるのに。



別れの日は涙を誘うような、ありがちな雨の夜だった。

誰にも気付いてもらえない徒花は花を開けずに、心無い雑踏の濁流に踏み潰されていく。

コンクリートの上では土にも還れずに。


(明日が晴れだろうが、雨だろうが、もぅ関係ねぇ)