手に持っている緋色の花は2本同時に咲くことのない、たった一輪の愛の花。

真っ白なこの部屋の床には4枚の花びら。


千切って遊んでいたのは一目瞭然。


ナツを認めると白い歯を剥き出して笑い、残りの1枚を楽し気に千切りフッと飛ばした。

「ジ・エ~ンド。ハッハ~」

ソイツは両手を上げてステップを踏み出した。

最後の花びらが千切れた瞬間に響いた些々やかな悲鳴。

ナツを繋ぎ止めていたギリギリの理性を切断した。


「ヒャッホ~イ」



踊り狂う愚神を力一杯殴りつける。

慌てて、床を這いながら逃げる愚神を捕まえ、首を締めながら絶対の服従を誓わせた。

そして、ミカンという門番が居なくなったパンドラの門を開放させた。

冬眠から覚醒された黒いマリス[悪意]は、あっという間に雪をも欺く白いハートを真っ黒に染め上げていく。

ナツは首輪で繋いだペットに何者かと詰問すると、ソイツはこう言った。

「誰の心の中にも必ずある罪悪の権化」

それを聞いたナツは口角を吊り上げた。

「なるほど」