捨て猫みたいだった。

ナナ吉と出会った日も雨。

(ナナ吉は誰と別れてきたんだろう?)

(誰が俺を拾ってくれる?)

降り注ぐ悲雨に1人ズブ濡れるナツ。

ナツを取り囲む無数の靴音が

傘に弾ける雨音が

スピーカーから流れる誰かのエレジー(哀歌)が

体温を略奪する雨粒が


ボロボロに砕かれた恋心をえぐっていく。

それはまるで、悪魔へのバプテスマ[キリスト教の洗礼で全身に水を浸す儀式]のようだった。


(これがドラマならラストはどうなるんだろう?)


[別離]というベタな悲劇。

(哀しみに打ちひしがれる主人公は俺だったなんてな)と気付いたナツは

いつの間にか自分の心の中に勝手に住み着き、南とサクラを徒[イタズラ]に見殺しにした神と呼んだ薄情者を捜した。


誰かのせいにしたかった。

神の仕業にしてしまいたかったから。






そして見つけ出したソイツは良心の真ん中で悠然と遊び回っていた。