最後の1分―

頭の中を駆け巡る幾百、幾千の伝えたい言葉。

この中から何を選ぶべきなのか判らないでいた。

愚かなまでにミカンを想う愛情。

それを何1つ上手く伝えられないまま無情にも時の砂は落ちていく。

ミカンの心を揺らせない自分の愛情の浅さが1秒1秒、終局へと波及していくようだった。


「ねぇ?ミカンの事、信じてた?」

不意に投げ掛けられた質問はナツには愚問すぎた。

「あぁ」

「そぅ。でも信じるのって簡単だもんね」

自嘲するかのように、ため息混じりにミカンは言った。

「簡単!?何だよ、簡単ってさぁ?簡単じゃねぇよ!簡単な訳ないだろっ!!」

「ごめん」


思わず怒鳴ったナツを見て心底、自身を憎んだ。

(なんで、こんなになっちゃったんだろ)

そう思っても今更引き返せなかった。

ミカンを蝕む至極の罪悪感に拍車がかかる。


「なぁ。俺と居て楽しかったか?」

「うん。出会えて良かったと思ってるよ」

ミカンには辛い質問だった。

嫌われる為にも「No」と答えるべき所で、心は正直になる。


(今日だけは世界一の嘘つきに)


固めてきたニセ物の心は、もはや決壊寸前。