「ねぇっ!ホントにいいの?そんなモンだったの?」

ミカンは悔しさから訊かずにはいられなかった。

最初から最後まで冷静でいようと思ったのに、気持ちに歯止めが掛からない。



しかし、ナツは心を定めていた。


今迄何も望んだ事の無いミカンが初めて望んだ事。

[別離]

こんな形ではあるが、今まさにやっとその時が訪れたのだ。

ミカンが望む事なら何だって叶えるつもりだったナツに。

(好きな女の願いを叶えることは全て倖せに通じてると思ってたけど、そうとも限らないらしいな)

皮肉にも口角は吊り上がる。

沈黙を続けるナツに

(少しくらい強引に抱き締めてくれたら)

期待せずに願うミカン。


ため息で壊れてしまいそうな切実は、1mも離れていないのにナツに届かない。


「ナツ。我慢することは優しさじゃないよ。何で言ってくれないのっ?『ふざけんなっ』て」

それでも黙っているナツに、ミカンは諦め顔で言った。