転がって行く荊[いばら]の坂道が背徳へと続いていくのをナツはまだ見えないでいた。
 
 
 
 
「いいよ。何?」
 
「あのね...別れて欲しいの」


覚悟をしていたつもりなのに。


現実は想像以上に重くのしかかってくる。
 
 
(こんなのだけが、予想を裏切らない)
 
 
「なぁ、何でそんな話をこんな場所でする訳?おかしいだろっ!」
 
言ったとこで、この問いに答えを求めた訳じゃない。
 
ただ何かを言わずにはいられなかった。
 
 
 
しかしミカンがこの場所を選んだのには理由があった。
 
2人きりだときっと泣いてしまう―
 
これだけの雑踏の中なら泣くのを堪えられると思ったからだった。