約束の場所―

プランターの中だけに生きる事を許された薄弱なチューリップ

始めから終わりまで管理され続ける、殺されない落葉樹

その曲線の美しいフォルムには何の意味も持たない、冷たいステンレスのオブジェ

計算され尽くした数々の優しくないコンクリートの造形

そこに佇む亜流(真似する)に亜流を重ねる男女。

その中で1人、優しいだけの男がキョロキョロ辺りを窺っている。

時計は18:47―

(つい嬉しくて早く着きすぎたか)

ナツはうごめく人の群れに視線を戻し、再び目を凝らした。

何万もの雑音が織り混ざっても共鳴するハズもなく、単音を聞き取れない程のノイズが耳をつんざく。

「何でこんな場所なんだよ~」

人ごみの嫌いなナツは1人ごちる。

丁度その時、見覚えのある服を着た女が人波から吐き出されてきた。

ナツはサリーみたいにクールな再会を果たそうと考えていたが、ミカンを見付けると同時に駆け寄って行った。