ミカンの一言でナツのキングは呆気なく奈落の底に突き落とされる。

もはや、ナツに楯突く力も理由も無かった。

「1人で暮らしてるのかと思ったら何だこれは?借りてやったアパートにはいつ行っても居ないから捜してみれば、こんな汚い奴と。帰るぞっ!!」

ジョーカーはミカンの手を引き連れ去って行った。

廊下に汚い足跡だけを残して。

ジョーカーに勝てるだけの切札を持ち合わせてなかったナツ。

1人、隔離された白い扉に向かってシニカル[皮肉]に呟いた。

「ココはアメリカじゃないぜ。小さ過ぎて靴脱ぐ場所が見えなかったか?オッサン」


足跡を拭きながら己の幼さが惨めでならなかった。

世界はそれでも何喰わぬ顔で回り続けている。

こんなに穏やかなのに、信じられない位のスピードで。