ナツの心に依存しそうだった悪しき不安に安堵の洗礼をもたらしてくれた。

辺りを行き交うラウ"ァーズ。

その誰もが立ち止まり天を見上げている。

この時だけは、誰の心にも浅はかな打算も不実さも見つけられなかった。

「ハッピー クリスマス」

ミカンを後ろからソット抱き包む。

小さなミカンの頭の上には丁度ナツの顎が乗り、スッポリとナツに覆われた。

ミカンは倖せを噛み締めながら

「ナツ、来年もココで待ち合わそうね?」と

任意の同意を求める。

言葉数少なく、短い中にも叙情の綾が確かに在った。

ミカンの未来に自分が存在している事が、単純に生きる意味を作ってくれた。

「来年は遅れないようにするから」

街の灯り

華やぎ

喧騒さ

全てを凍てつく吐息のオブラートが包み込む中で

降り積もる白い喝采だけが鮮やかに浮き彫られてゆく。

流線型の2つの淡いシルエットは

仄かに

そして静かに

埋もれていった。