ミカンはいつだって、こうやって合わせてくれた。



ミカンは多くを望まない娘だった。

「何か欲しい?」

「何がしたい?」

訊くだけ無駄である程に。

ただそこにナツが居てくれたら良かった。

ナツはいつも羨望の眼差しに晒された。



橋の真ん中で笑い合う2人の頭上から、汚れる寸前の真っ白い綿雪が落ちてきた。

「おぉ!すげぇ」

空を仰ぐナツは、思い当たりのない不愉快な不安に囚われる。

(この白い螢が全てを埋め尽くしてしまうのではないか?)

しかし、それを否定するかのようにミカンが嬉しそうに言った。

「ねぇ、知ってる?クリスマスに降る雪は、サンタさんがそこを通った時なんだって」

「てことは、今この上をサンタが通り抜けたってこと?じゃあ、雪が降んねぇ所にはサンタ来ねぇの?」

「何でそう夢を壊すの!?現実に戻さないでよぉ~」